ねこさんの旅日記

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未来の森と人を育てる「カカオ・フォレスト」 ―フランスのトップパティシエ、 フレデリック・カッセル氏らの挑戦-講演会

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M.Frédéric Cassel
笹川日仏財団/フレデリック・カッセル 主催講演会
未来の森と人を育てる「カカオ・フォレスト」
―フランスのトップパティシエ、
フレデリック・カッセル氏らの挑戦-

2020年1月31日(金) 14:00-16:00
場所:笹川平和財団国際会議場(虎ノ門
後援 :フランス大使館 /ルレ・デセール
ルネサンス・フランセーズ日本代表部

「カカオ・フォレスト」をご存じですか?
私は全く知らず、、、、。

www.cacaoforest.org


「カカオ・フォレスト」は
持続可能なカカオの未来に目を向け、
agroforestry(他の種類の木々と一緒に
カカオを育てる)を通じて、
カカオの木の品質と生産性を高め、
農家の生活を改善し、環境を保護する
農業モデルを作る活動です。
世界のトップパティシエが集まる
ルレ・デセールとショコラを製造する企業、
研究機関、NGO現地生産者がこの活動に
参画しています。

フレデリック・カッセル氏は、
フランス・フォンテンブローをはじめ、日本や
ロッコ、ドイツに店舗を持つ
日本でも有名なパティシエであり、
ショコラティエです。
日本でのサロン・デュ・ショコラにも
もちろん出店され、忙しい中
「カカオ・フォレスト」活動についての
講演会の講師として登壇されました。
講演会終了後は、フレデリック・カッセルの
それはそれは美しく美味しいショコラの
試食タイムも!(実はこれが楽しみで申し込みました)
以下、長文となりますが
講演会の内容を記します。

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<講師について>
M.Frédéric Cassel
フレデリック・カッセル:
1967 年生まれ。FAUCHONにて修行中に
ピエール・エルメ氏より最高の素材と厳格な仕事を学ぶ。
本店のあるフランス・フォンテンブローのほか、
ロッコ・ドイツ、日本に店舗を持つ。
2013年にはパティシエ・コンクールの最高峰
クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー
にてフレデリック・カッセル率いる
フランス代表チームが見事優勝を収めた。
ルレ・デセール名誉会長。

www.frederic-cassel.jp



<講演会内容>
◇生まれについて
「代々肉屋を営む家庭に生まれ育ったが、
肉屋で良質のバターの生産もしていたこと、
庭の果樹園で採れたフルーツで祖母がスイーツを作る
という環境で育った。
昔は旬に採れたフルーツでスイーツを作っていたが、
今はいつでも手に入ることができるので
若い人は素材のシーズン性を忘れかけている。
25年間フォンテンブローでお店をやっているが、
ここでは地産地消にこだわり、
地域でとれるもので商品を作っている。

◇カカオ豆のハイブリッド種「CCN51」について
カカオ豆の栽培は、ワインの葡萄と一緒で
土壌作りがポイントとなる。
同じ品種のカカオ豆でも、地域や土壌が異なると
違う味わいが生まれる。

現在栽培されているカカオは3系統ある。
①フォラステロ種(FORASTERO)
②クリオロ種(CRIOLLO)
③トリニタリオ種(TRINITARIO)
しかしここ数年、ショコラ関連の大企業が使うのは
カカオ豆のハイブリッド種「CCN51」という品種が
増えてきた。このハイブリッド種は、病気にかかりにくく、
虫にも風にも強い品種である。
通常、カカオの木は実がなるまで3-4年かかる。
しかし「CCN51」は2年で実をつける。
また「CCN51」の実の大きさは既存の品種よりも大きい。
この生産性を増強した品種を、大量に消費する企業向けに
植え替える農園が増えてきた。
アフリカは世界で一番カカオの生産量が多い。
このアフリカで「CCN51」での生産が増えてきている。
大量生産・マス市場向きとして生産されたカカオは、
輸出する際に、よりコンパクトにするため
「カカオパウダー」に加工。その材料をもとに
多くはスーパーで売っているチョコビスケットなどの
大量消費向け商材用として加工されることが多い。

ここで問題なのは「CCN51」を植える際には
ヤシの木を伐採してしまうことにある。
在来種のカカオの木の栽培では、カカオの木のまわりに
ヤシの木が必ず植えられ、風雨や虫からカカオを
守っている。
しかし「CCN51」を植える農園は、このヤシと在来種の
カカオを伐採。畝を作りそこに灌漑用の水をはり
殺虫剤を流しこみ、それを土が吸って木が育つ。
「CCN51」を植えることで森林伐採、森林破壊が
並行して進行してしまうのだ。

このようなカカオ栽培の現状を背景に、
私たちはカカオ・フォレストのプロジェクトに賛同。
ハイブリット種を消滅させたいのでなく、
自分がいいと思ったカカオの木を残すために
共生させたいと思っている。

◇カカオ・フォレストついて

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美味しいショコラを将来的にも
継承するにはどうすればいいか?

カカオ農園の現状は、小規模な家族経営農園。
世襲制の職業なので3世代で作っている農家が多く、
カカオ栽培のノウハウを知らず低い生産性、
低収益が続く。
ハイブリッド種カカオ豆の栽培に生産者が乗り換え、
森林伐採や環境破壊につなげないため
「カカオ・フォレスト」プロジェクトをスタート。
持続可能なカカオ生産のため、
カカオ農園に他の果物(マンゴー、アボカド)を
植えて共生させ、生産者の生活基盤の向上を図る
ことが目的。

ドミニカ共和国での取り組み

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2016年からドミニカ共和国で「カカオ・フォレスト」
活動をスタート。
ドミニカ共和国では昔から有機栽培に
取り組んでいる農家が多い。
もともと貧しくて肥料を買えなかったのが背景にあるが、
殺虫剤を使わずに有機栽培でカカオ豆を作ることができた。


最初は農学エンジニアが生産者を調査することから始め、
もっといいカカオが採れることが可能なことを確信。
様々な専門家と生産者、政府とともに活動をすすめる

①生産者とのワークショップ

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専門家と生産者が理想的なagroforestry
(他の種類の木々と一緒にカカオを育てる)を
考えた。
実は現地の人々は読み書きができない人もいる。
だから読めなくてもイラストで描いて交流した。
未来のカカオ農園はどうなるのか?と
イラストにしてもらった。そうして今ここに絵があるが、
ちゃんとカカオの木の上にヤシの木が共生している
このようなイメージを持つ生産者がちゃんといるのだ。

しかし生産者は
「ショコラそのものを食べたことがない」という。
カカオの在来種と「CCN51」の味の比較ができないのだ。
カカオを生産しながらショコラを知らなかった。
昨年、ルレ・デセールのメンバーが作っているショコラを
現地の生産者に食べてもらった。
我々は現地でショコラを作ったが、そこで安いカカオ豆で
作ったショコラと我々が使う高品質のカカオ豆から作った
ショコラを食べ比べてもらった。
生産者は「こんなに味が違うんだ!」と実感していた。

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②カカオ以外の果物を販売

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生産者にカカオ以外の収入源をもたらす
果物(マンゴー・パッションフルーツ)・野菜(アボカド)を販売してもらう。
今までカカオ農園にはカカオの木以外にも
果物や野菜が育っていた。
しかし彼らはそれを食べることができると知っていったが、商品として売ることができるとは考えていなかった。
カカオ栽培には時間がかかっても、
複数の植物・果樹はすぐに作ることができ、
売ることができる。
カカオに関わっている生産者たちの生活の安定を
他の作物で可能にできることを確証した。

ショコラティエとしての使命
なぜ私がカカオ・フォレストに参画しているのか?
それはショコラティエとして、
美味しいカカオ豆が必要だから。
ワインで言えば、シャトー・ブリオンのような
高級ワインに匹敵するショコラを
上質なカカオ豆を使って作りたい。
小規模経営のカカオ農園は、
私はなくなってはいけないと考える。
なぜならフランスでは、個性を持った商品を作る
小規模な小麦製粉所が世代交代で縮小し、
大きな製粉メーカーに買収、独占されて
風味の高い商品がなくなっているからだ。
美味しいカカオを作るためには、
そうした動きがあってはいけない。
ショコラは「カカオが何%入っているか」ではなく
「風味の高い、品質の良いカカオ豆を使っている」
が大切なのだ。」

以上が講演会の内容です。

<試食タイム>

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「デクヴェルト」
カカオ60%
黄色い果実を思わせるフルーティな
ファーストノートからドライフルーツの
ニュアンス、ウッディなアロマも感じるガナッシュショコラ。

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ロマ・ソタヴェント
カカオ64%
カカオの長く続く余韻の中に熟した
フルーツのアロマと、繊細なトースト香を感じるガナッシュショコラ。

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タイノリ
カカオ64%
柑橘系のフレッシュな酸味にローストアーモンドのような香ばしさを感じる、シンプルなガナッシュショコラ

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ヴァローナ
「タイノリ」64%
ドミニカ共和国産カカオ使用。
柑橘系のフレッシュなタッチに続く、ローストアーモンドのような風味と、焼きたてパンのような香ばしさが特徴のブラック・チョコレート

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ヴァローナ
「バイベ・ラクテ」46%
ドミニカ共和国産カカオ使用。
フルーティな酸味と、繊細な苦みに彩られた
持続するナッティーなアロマが特徴のミルク・チョコレート