ねこさんの旅日記

旅が好き。パンが好き。猫が好き。ビギナーでマイナーな旅と懸賞と株日記です。

コクヨデザインアワード2018-グランプリ「音色鉛筆で描く世界」

イメージ 2

KOKUYO DESIGN AWARD 2018(HP)
コクヨデザインアワード2018
(青山・スパイラルホール)
2019.1.19

コクヨデザインアワードとは、
使う人の視点で優れた商品デザインを広くユーザーから集めて、
商品化を目指すコンペティションです。
2002年にスタートし、今回で16回目の開催となります。

2018のコンペテーマは「BEYOND BOUNDARIES」。
世界46カ国から集まった1289作品の中から
一次審査を通過した10点を対象とし、
1月18日に最終審査を開始。
グランプリ1点と優秀賞3点が決定しました。 
グランプリ Grand-Prix + オーディエンス賞

作品名:「音色鉛筆で描く世界」
作者:山崎タクマ氏
作者コメント:
本提案は、紙と鉛筆の微小な摩擦音を増幅することで、
文具を介して生まれる新たなコミュニケーションのかたちを
あらわしたプロジェクトです。
「描く」ことの意味を再考し、視覚情報を残すことを目的としない
「楽器としての文具」の在り方を探求しました。
文具が音色をえがく為のクリエイティブツールとして再定義することで、
目の見えない人と見える人にとって、
新鮮な創造的体験の可能性をあらわしました。

イメージ 1

<山崎氏によるプレゼンテーション>
「私を含め皆さんも文具を使う楽しい経験があると思う。
しかしこのような真っ暗な場所で文具を使うと楽しくない。
このように文具は、視覚情報に特化した商品なんじゃないかと考えた。

これはあくまで私の仮説に過ぎない。

そこで実際に様々な場所に行き、目の見えない方に話を聞いてきた。

結論からいうと、彼らは文具を避けてきた。
具体的には「失敗経験を生み出すツール」という認識があることが分かった。
これは文具と人の関わりの中にある、明確な境界の一つだと思う。
そしてこの境界を超えるために、新たな文具の定義を作りたいと考えたのが
今回のプロジェクトの趣旨となる。

そこで自分が着眼したポイント、それが「摩擦音」。
「摩擦音」は、鉛筆の種類や描く形により微妙に変化する。
その音色を増幅するプロダクトを創出することによって
描くことの楽しさを聴覚で発見できる新しい文具が生まれると考えた。

そして様々な素材と形状を試行錯誤した。
試作品のうち、一つがこのフォルダー。筆記具に取りつけて使う。
コンマ3mmの塩ビ板を曲げて作っており、摩擦音を増幅させる
振動板の役割をする。体感値で約2倍くらい、描く音が大きく聞こえる。
イメージ 3

もう一つは楽器などに使われる金属に置き換えてデザイン。
金属の特徴を活かしてクリップを作成、ワンアクションで着脱できる。
つける鉛筆には芯がない。描くという行為の中から「摩擦音」のみを
抽出したプロダクトになる。

イメージ 4

そしてある程度形になったものを持って、全盲の方とワークショップを行った。
ここでは振動板から出る音で音楽を作っている。
この「音を描く」という行為には失敗がない。
描き方も能動的で、イキイキと変わっていくのが印象的。
2日間に渡るワークショップで気づいたことは、
「音のキャッチボールが楽しい」と言ってくれたこと。
「視覚」という境界を越えて、フラットな関係が生まれた。

イメージ 5

もうひとつは「文字を摩擦音だけで知覚できたこと」。
文字を摩擦音によって認識できた。
これらの考察より、今後は盲学校での文字学習プログラムに応用することで
今まで指先だけで文字を認識していた行為が
聴覚を使うことでより立体的に文字を理解して
楽しく文字を学習するプログラム構築の可能性があると考えている。

また課題点も発見し、プロダクトに反映している。
「えんぴつけづり」は上の部分がやわらかい素材でできていて、
視覚情報に頼らなくても鉛筆を削る量と削りカスの情報を確認できる。

「定規」は音を描くためのもの。直接をひくためのものではない。
めもりの部分がへこ形状になっており、ここに鉛筆を走らせると
めもりの音が「カタカタ」となる。
こうすることで1mmの概念まで伝えるようにした。

文具と目が見えない人との間に境界があるということ、
そして「摩擦音」に注目することにより、
文具が音の形を描くためのツールに生まれ変わったこと、
そしてそれを使うことで、視覚という境界を越えて
音の形を描くことを一緒に楽しめた。

<審査員講評>

・審査のポイントは
「テーマとあっているか」「文具としてのクラフト」「自分が欲しいか」

・試すと楽しい。文豪になった気がする。自分が鉛筆になった感じがする。
人に伝えたくなる魅力がある。

・電子的なメディア技術の感覚を経て、アナログを身体で感じる感覚が新鮮

・文具のカラーがすべてマットブラック。視覚情報に頼らない意図を感じる。

・鉛筆の他に定規や鉛筆削りなどの発展性があり、プロダクトとして成立。

・今、タブレットで書くことは、子供の知育上良くないと言われている。
紙の摩擦音が知育に影響するとすれば、
商品化するうえでターゲットの広がりを感じる。